浅井真理子×渡辺えつこ

2015.7.18 - 2015.8.16

 渡辺えつこは、薄暗いバスルームに置かれた鏡に、宇宙を捉えるハップル望遠鏡を見、シリーズ「ハップル」を展開している。鏡の内と外にまるで次元の違う宇宙が共存している、そう感じたそうだ。近年は、テレビのニュース画像を多く描いている。鏡やテレビ、いずれも映されたものがその意味性を越えて、突然不可解なものごととして飛び込んできた瞬間を写真に撮り、描く。
 浅井真理子は、旅先で偶然拾ったネガをプリントする、薬品で小さな家をつくるなど、生活の中に潜む〝世界のかたち〟を見い出し、感覚の深層を可視化することを試みている。近年発表しているカーボンノートのドローイングは、描く圧力によって写り、混ざり、消えるを繰り返す。それらは、輪郭しか思い出せない夢で逢った人といった趣き、あやふやなままコマ送りで思考に刻まれていく。
 一瞬を捉えピタリと平面にうつし込む渡辺と、揺らぐままに取り込もうとする浅井、どちらの作品と対峙しても、瞬間のつらなりでうつろう時が構成されていることを、思い知らされる。静かなほど、耳の奥で増強されるざわめき。晴れ渡りすぎた空をみあげている時、突然訪れる不穏。意識の奥底を照射する、あらわにする、淡い光となって。



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