伊藤 慶二

過去から未来へのまなざし

2016.10.8 - 2016.10.23

 取り巻く空気に、未だ夏の名残りが色濃く感じられた9月。アトリエでロクロに向かう伊藤慶二の姿があった。キースへリングのイラストが大きく入ったTシャツに、半ズボン、草履、夏休みの子どものようなスタイルに思わず頬が緩んだ。
 「今回は新作と、これまで余りみせる機会のなかった20年~30年ほど前の作品を並べてみたいと思うんだ」と、個展のプランを口にする。新作とは、やきものと漆による、これまで以上に絵画的要素の強い作品群を指していた。
 厳密に言えば、用いるのは漆ではなく「カシュー」と呼ばれる代用品だ。やきものと漆の組み合わせは縄文時代からあり、機会があれば試みたいと思っていたが、いかんせん漆に弱い体質がそれを邪魔していた。そのような中、カシューの存在を知り、今回「朱」をはじめとする新作シリーズが生まれたという訳だ。
 まるで自身の立体作品を平面にしたような意匠。具象ではないのだが、それらを眺めていると、古墳や風景、地図のようにもみえる。そうして、「新しい器の文様を暗示させるような試みをしたい」との作家の言葉に頷く。そこには、意欲的に挑戦し続ける「まだまだやれる」という、静かにしかし強かに燃焼する魂があった。

WORKS

PROFILE

略歴
1958 武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)卒業
1960 岐阜県陶磁器試験場デザイン室勤務
日根野作三に師事
受賞歴
2017 薬師寺 平成の至宝 83選奉納
2016 日本陶磁協会 金賞
2013 地域文化芸術功労表彰/文科省
個展
2023 伊藤慶二の絵と陶彫/小山登美夫ギャラリー/東京
慶/L gallery/名古屋
2022 伊藤慶二展/ギャルリ百草/多治見
伊藤慶二展/小山登美夫ギャラリー/東京
伊藤慶二展/アートサロン光玄/名古屋
2021 3.11鎮魂−魂の宿る場所−/ギャラリー数寄/江南, スペース・アルテマイスター/会津
2020 象/L gallery/名古屋
素描展/橋本美術/名古屋
2019 伊藤慶二陶展−土とたわむれて−/和光ホール/東京
盌展/橋本美術/名古屋
2018 小さきものたち/L gallery/名古屋
土から生まれるかたち/ ギャラリーNOW/ 富山
百草20周年記念企画 伊藤慶二展/ギャルリ百草/多治見
2017 忘れてはならない記憶/オリエンタルデザインギャラリー/広島
2016 過去から未来へのまなざし/ L gallery/名古屋
2015 土を思うがままに/グランビスタギャラリーサッポロ/札幌
グループ展
2023  24周年企画 好きなかたち展/ギャラリー数寄/江南
 伊藤慶二と薫陶を受けた作家たち/樂翠亭美術館/富山
2022 ホモ・ファーベルの断片−人とものづくりの未来−/愛知県陶磁美術館/瀬戸
2021 北陸工芸の祭典 GO FOR KOUGEI/勝興寺/高岡
2018 伊藤慶二・板橋廣美 二人展/ギャラリー数寄/江南
2017 SHIBUI/galleria Monopoli/Millano(IT)
2016年度日本陶磁協会金賞受賞記念 重松あゆみ・伊藤慶二展/壺中居/東京
2016 伊藤慶二 茶陶展−自在−/柿伝ギャラリー/東京
革新の工芸−“伝統と前衛”、そして現代−/東京国立近代美術館工芸館/東京
人が大地と出会うとき/愛知県陶磁美術館/瀬戸
2015 four 次展Ⅱ/L gallery/名古屋
four 次展/L gallery/名古屋
パラミタ陶芸大賞展/パラミタミュージアム/三重

PAST EXHIBITION