伊藤 慶二

2018.12.15 - 2019.1.13

 蚤の市の語源は諸説ある。フランス語で「marche aux pecus」という蚤の市は、フランス語 〝pecus〟 が 〝蚤〟〝暗褐色〟という意味を持ち、暗褐色の古い家具や骨董品を売り買いする市場だから。蚤が宿主を移り回るように、品物が人から人へ渡されるから。蚤がわくほど古い物が売られていたから。とさまざまだが、今回は、蚤のようにわいて溢れるくらい細かな品が売られているから、の言説を信じたい。
 とある日、作家がひと言「蚤の市」と口にした。なにかと問うと、展覧会のテーマだという。蚤の市のように賑やかに、小さいものを並べたいのだと。「それは楽しいですね!」と笑顔で頷きあう。頭の中に浮んだ情景に胸を躍らせた。後日、訪れたアトリエで、「例えば」といって台上に並べた景色を実際、目にして思わず頰が緩んだ。  土が残った時に、なんの気なくつくるのが日課だという。大きなものは構えるが、小さいものは構えずつくれるからいいんだよ、とも。肩の力が抜け切る、それは制作のリズムを司る大切な休符、息継ぎなのだろうか。
 なにと訊かれても、なにともいいようがない。拾った石を台座に据える。手の中で自由に形づくる。なんでもないものができ、なんでもないものに美が宿り、なんでもないものに生が見える。純粋に「つくること」の歓びに溢れ、それぞれがうれしく声をあげる。
 旧いものから新しいものまで小品を中心に、お札立てやお屠蘇をいただく徳利、盃など、迎春のしつらえに相応しい作品も並びます。愛らしくも、伊藤慶二のエッセンスが凝縮した小さきものたちに、ぜひ会いにいらしてください。

WORKS

PROFILE

略歴
1958 武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)卒業
1960 岐阜県陶磁器試験場デザイン室勤務
日根野作三に師事
受賞歴
2017 薬師寺 平成の至宝 83選奉納
2016 日本陶磁協会 金賞
2013 地域文化芸術功労表彰/文科省
2007 第四回円空大賞 円空賞
2006 岐阜県芸術文化顕彰
1981 Faenza Prize (IT)
1979 '79日本クラフト展 受賞
1978 世界クラフト会議日本クラフトコンペ 受賞
個展
2023 伊藤慶二の絵と陶彫/小山登美夫ギャラリー/東京
慶/L gallery/名古屋
2022 伊藤慶二展/ギャルリ百草/多治見
伊藤慶二展/小山登美夫ギャラリー/東京
伊藤慶二展/アートサロン光玄/名古屋
2021 3.11鎮魂−魂の宿る場所−/ギャラリー数寄/江南, スペース・アルテマイスター/会津
2020 象/L gallery/名古屋
素描展/橋本美術/名古屋
2019 伊藤慶二陶展−土とたわむれて−/和光ホール/東京
盌展/橋本美術/名古屋
2018 小さきものたち/L gallery/名古屋
土から生まれるかたち/ ギャラリーNOW/ 富山
百草20周年記念企画 伊藤慶二展/ギャルリ百草/多治見
2017 忘れてはならない記憶/オリエンタルデザインギャラリー/広島
2016 過去から未来へのまなざし/ L gallery/名古屋
2015 土を思うがままに/グランビスタギャラリーサッポロ/札幌
2014 伊藤慶二展/館・游彩/東京
土岐、暮れの刻、薪窯の火色/ L gallery/名古屋
2013 ペインティング・クラフト・フォルム/岐阜県現代陶芸美術館/多治見
2012 3.11鎮魂−魂の宿る場所−/スペース・アルテマイスター/会津若松, ギャラリー数寄/江南
101体のスモールトルソー/銀座一穂堂/東京
2011 こころの尺度/岐阜県美術館/岐阜, パラミタミュージアム/三重
グループ展
2022 ホモ・ファーベルの断片−人とものづくりの未来−/愛知県陶磁美術館/瀬戸
2021 北陸工芸の祭典 GO FOR KOUGEI/勝興寺/高岡
2018 伊藤慶二・板橋廣美 二人展/ギャラリー数寄/江南
2017 SHIBUI/galleria Monopoli/Millano(IT)
2016年度日本陶磁協会金賞受賞記念 重松あゆみ・伊藤慶二展/壺中居/東京
2016 伊藤慶二 茶陶展−自在−/柿伝ギャラリー/東京
革新の工芸−“伝統と前衛”、そして現代−/東京国立近代美術館工芸館/東京
人が大地と出会うとき/愛知県陶磁美術館/瀬戸
2015 four 次展Ⅱ/L gallery/名古屋
four 次展/L gallery/名古屋
パラミタ陶芸大賞展/パラミタミュージアム/三重
2013 The book as ART/L gallery/名古屋
three 次展/L gallery/名古屋
伊藤慶二+鯉江良二 土に宿すかたち-パイオニアたちの仕事-/樂翠亭美術館/富山
お茶の愉しみ お酒の悦び/ギャルリ百草/多治見
2012 山田節子が選ぶ 器量ある7人の仕事/ギャルリ百草/多治見

PAST EXHIBITION