成瀬 友彦

オン・ザ・ロード

2019.3.16 - 2019.3.31

 1973年、アメリカ軍がベトナム戦争から全面撤退した年。大学生だった彼は、当時のレートで約100ドルの所持金とカメラを持ち、初めてアメリカに渡った。長距離バス、グレイハウンドの21日乗り放題切符を用いて、各地を撮影するためだ。
 サンフランシスコに降り立ち、ソルトレイク、シャイアン、デンバー、シカゴ、メンフィス、ニューオリンズ、19日目にロサンゼルスに辿り着く。自動販売機の1ドルのサンドイッチで空腹を凌ぎ、キリスト教青年会、いわゆるYMCAの1ドル宿や深夜バスで車中泊という、若いからこそ可能な旅でもあった。Tシャツから、すぐにダッフルコートを着込まなければならない気温差に、アメリカの広大さも感じた。
 この旅行での経験が、自身の人生を大きく変えた。1992年、再び、アメリカへ。20年前に撮りきれなかったものを捉えるために。以来、機会ある毎に渡米しては、シャッターを切ってきた。旅はひとりがいい。おもむくままに各地を周り撮影された作品は、ロードムービーのようでもある。2012年から毎年、福島県の浪江町に入り風景を収め続けるのも、彼にとって残しておかなければならない、痛切な〝オン・ザ・ロード〟であるからだろう。
 今展では、1973年、1992年、2017年のアメリカ、2018年の浪江と異なった時間、土地の作品が並べられる。かつてのアメリカでは人種差別が色濃く残っていたし、しばしば、よそ者であることを肌で感じさせられた。しかし、人や街とは違い、道は誰をも受け入れる。そうして、いずこかへ導いてくれる。作品を観るあなたも、また同じく。

WORKS

PROFILE

略歴
1951 愛知県生まれ
1974 日本大学芸術学部 写真学科 卒業
株式会社日本デザインセンター 入社
1980 フリーランスカメラマンとして独立
日本広告写真家協会(APA) 会員
受賞歴
1995 日本写真ビエンナーレ 入選
1992 APAポスター展 入選
1990 平成の日本人展 入選
1982 リクルートクリスタルコンテスト 写真賞
1974 日本大学芸術学会 奨励賞
個展
2019 ON THE ROAD/L gallery/名古屋
2017 Recollection Landscape NAMIE/L gallery/名古屋
グループ展
2022 RED vol.7/Gallery sen/神戸
KOBE-HEART + Nagano Eye/ギャラリー豆蔵/長野
2021 RED vol.6/Gallery sen/神戸
2019 KOBE-HEART vol.10/KAVC/神戸
2016 KOBE-HEART vol.7/KAVC/神戸、せんだいメディアテーク ギャラリー4200/仙台
写真祭/NEUTRAL GALLERY/神戸
2015 KOBE-HEART vol.6/KAVC/神戸、せんだいメディアテーク ギャラリー4200/仙台
写真祭/NEUTRAL GALLERY/神戸
2014 KOBE-HEART vol.5/KAVC/神戸、せんだいメディアテーク ギャラリー4200/仙台
写真祭/NEUTRAL GALLERY/神戸
2013 KOBE-HEART vol.4/KAVC/神戸、せんだいメディアテーク ギャラリー4200/仙台
写真祭/NEUTRAL GALLERY/神戸
2012 KOBE-HEART vol.3/KAVC/神戸、せんだいメディアテーク ギャラリー4200/仙台
2011 KOBE-HEART vol.2/KAVC/神戸

PAST EXHIBITION