須貝 旭

彗星考

2022.11.26 - 2022.12.11

 古代より彗星は災いの前兆など驚異の対象であった。天の秩序を離れて突然現れ来る大きな驚きについては、紀元前より記述が残されている。1910年のハレー彗星大接近では地球と太陽との間を通り抜け、その明るさは1等星程度。天の川をも凌ぐ大きさで、尾が天を横切り首尾ともに地平に達したとも。
 だが畏怖の念を抱かれてきた彗星も観測し続けていくと、周期性を持つ天体の運動であることが理解される。例えば、先のハレー彗星ならば、およそ75年周期の海王星族であるというように。周期があるということは、そこに過去と未来を重ねることもできる。そのような彗星の存在が、時間の経過を表現したいと思う作家のイメージにぴたりときた。
 一般的な絵具とは違い、銀箔にしろサイアノタイプにしろ、錆び、感光し、素材自身が転じ図像が浮かび上がる。そして留まることを知らず、ともに空気や光に影響を受け変化していく。いや、敢えて変化していく余地を残してつくられた、過去から未来へ向けて変化し続ける絵画。だからこそ、それは今一瞬しか目にすることのできないイメージとも言える。遠く離れた東洋と西洋、時間と距離を飛び越えて、同じ彗星を見たやもしれぬ人々の視線を重ねあわせて。

WORKS

PROFILE

略歴
1990 兵庫県生まれ
2016 愛知県立芸術大学 大学院 美術研究科
博士前期課程 油画・版画領域 修了
2017 School of the Museum of Fine Art at Tufts University(Boston, USA) 滞在留学
2020 愛知県立芸術大学 大学院 美術研究科
博士後期課程 油画・版画領域 修了
滞在制作
2019 AGA LAB/Amsterdam(NLD)
個展
2019 これから来る過去、通り過ぎた未来、おぼろげな今/Gallery Valeur/名古屋
2017 e.g.g.o 0059 須貝旭 展/大雅堂/京都
グループ展
2023 Interface - 界面 -/HRDファインアート/京都
2021 青の時間を纏う椅子・緑の光を纏う椅子/Lights Gallery/名古屋
2020 Framework/HRDファインアート/京都
2017 The Drawn World/School of the Museum of Fine Art at Tufts University/Boston(USA)
美大生展/SEZON ART GALLERY/東京
2016 視界に満ちる海/同時代ギャラリー/京都
2014 Parallel hexagon/ギャルリーくさ笛/名古屋
日タイ アートスチューデント交流展/チェンマイ大学美術学部ギャラリー/Chiang Mai(THA)
受賞歴
2022 展覧会・演奏会 GOTO アート助成/一般財団法人 後藤欣之輔・美智子 世の中に貢献する人を育てる協会
2017 第34回研究助成/公益財団法人日東学術振興財団
2016 平成28年度奨学生/公益財団法人堀田育英財団
2015 第30回ホルベインスカラシップ/ホルベイン画材株式会社

PAST EXHIBITION