以前は、窪みと周囲の空間の関係性に興味があった。その窪みに何らかの立体を組み合わせてみる。と、立体を置く位置によって、いかようにも変化する空間の在り方に惹かれるようになった。
立方体や円柱、球体、シンプルな造形の連なり。それは、わずかな揺らぎを見せるために必要な端正さでもある。しかし、決して無機的なのではない。土の温もりをたたえ、やわらかな黒で覆われている。一方、平面や球体などのシンプルな形のものは野焼きにし、火の痕跡や偶然性を付加する。近年、フォルムも多様になり、最近では石を取り込んだ作品づくりを試みもした。
昨年より、ロサンゼルス、ニュージーランド、ハンガリーと海外での発表が続く。海外だからこそ得られる刺激もあっただろう。特にハンガリーでは一週間程を費やし、東欧最大と謳われるバラトン湖北部のジオサイトで、地層の成り立ちが観察できる場所を数多く見学した。洞窟にも立ち入り、土でできた空間に包まれ、強く「地球」を感じたという。大自然には敵わない、しかし小さな立体であってもスケールを超え、洞窟で大きな空間に包まれているような感覚になる作品をつくりたいと思ったそうだ。それは、地球のロマンを内包した作品とも言えるだろうか。