Yes/Noの三つ編み

石田 典子 展

2008.5.10(土)- 25(日)



フランスのお土産にと貰ったラベンダーキャンディ、きれいな薄紫の一粒を口に入れた瞬間の衝撃。強い香りと甘く独特の風味、鮮烈な欧州体験。これは毒が入っていても判らないな、そう思ったことがある。石田典子の作品に触れた時、何故か記憶の底からあのキャンディの香りが呼び覚まされた。

観て聴いて、触れて匂って味わって「そうして自分の中に溜め込んでいったものが勝手に、あやふやな物語になるんです」時にひどく残酷で、しかし愛らしくもある童話のような世界。これまで表現されていたのがお話そのものとすれば、今展は「繋がる」をキーワードに、鏡や三つ編み、兎にブローチ…物語に登場するモチーフの一つ一つに、視点はクローズアップされてゆく。繋がる、とは裏返せば「縛る・縛られる」こと。例えば、三つ編みに囲まれた青空とも宇宙ともつかない、ぽっかりと虚ろに浮かぶYes/Noの文字、そこには、二つの答えが同居する自分自身に戸惑う少女の影がみえるよう。何に縛られ、答えを出せずにいるというのだろう。

不安に揺れる瞳の先に、シュールな怖可愛さをワンピースに仕立て纏ったもう一人のワタシが立っている。幼かった頃の思い出と、大人になった現在の自分のエッセンスが混ざりあい、出来上がったのが石田典子のラベンダーキャンディなのかもしれない。甘く強く香るほど毒は隠し易い、そんな微笑みと共に「はい、どうぞ」と差し出された小さな一粒。じっくり御賞味くださいませ。