お葬式の花嫁

小澤 香織 展

2008.12.6(土)- 23(火)



清楚な姿に芳しい香り、時に美の象徴とされながら、美しくあればあるほどに何処かしら寂しげで、孤高の影を落とす白百合。棺の中、百合の花に囲まれた祖母を見た時「花嫁みたい」だと思った。

親しい者の死に直面した喪失感はそのまま、彼女の制作の原動力となる。プラスとマイナスの感情が胸の中で天秤を揺らして初めて、作品に向き合うことができるのだと言う。このエピソードだけを切り取れば、ただ貪欲な表現者として映るだろうか。しかし、小澤香織の作品からネガティブな空気が漂うことはない。

花言葉の通り「純潔」であるが故に、生と死のイメージを両の手に繋ぐ百合のように、彼女もまた軽やかに、あっけらかんとさえしながら、そのどちらの側とも手を繋ぐ。両極との交感の記録。記録するということは、感情を引き剥がし、物を純粋なオブジェクトと化する強力な魔法。この記録こそが、彼女の作品なのかもしれない。

壊れ、役目を終え、意味を失ったモノとの会話。ピンクやレース、お菓子のような樹脂や石膏の質感、ブローチのような形。持ち主の手を離れ、寄る辺ないものとなったガラクタ達の鮮やかな集積。滴り落ちた宇宙にも見える“in”のインスタレーションと共に、ファニーでキッチュな小澤香織ワールドをお楽しみください。慌ただしい師走の町の中、すこし微笑みながら家路を辿っていただけることでしょう。