間の王国 -kingdom in between-

Veronika Dobers 展

2009.5.16(土)- 31(日)



例えば、さっきまで居た暗がりの部屋から、ユメの世界にゆくまでの道のり。また、遠くに聞こえる小鳥のさえずりが、現からのものだと認めるまでのあわい。温度や湿度、物音一つ漏らすことない薄く丈夫な皮膜の中は、まるで、完全に閉じられているのにバランスを崩すことないエコスフィア。淡く緑の匂いのする、澄んだ空気で充たされている。

たっぷりとした速度で蕩(とろ)けるように集まった雫が、目の中に落ちティアーズ・クラウン。そこから生まれる、波紋。皮膚や壁や領海や国境などという枠組みを軽やかに無視して、広がり続ける。街中の眠りという眠りに触れては、ほんの少し物語を歪ませながら。あり得ないことなど何一つないと、間の王国だけに伝わる接続詞で、捩れたり、段違いになったユメを次々と繋いでゆく。それは無意識の底から浮かび上がっては画面を彩る謎めいた象徴、ベロニカの描くバンドル、ドロップ、ブランチなどと、とてもよく似た形をしているだろう。

目を醒ませば、はっきりとは思い出すことの出来ない向こう側。ユメの尻尾は捕まえられない。でもきっと、よくよく見てみれば、テーブルの上カップに飲み残した紅茶や、あなたの胸の奥に幽かな震えが残っているかもしれません。彼女の世界に触れたのだという証として。

鮮やかな若葉の芽吹き、きらめき眩しい皐月の風に吹かれ、ぽっかりと現れた間の王国へとぜひ足をお運びください。