あふれだす

かわむらるみ 展

2009.6.20(土)- 7.5(日)



脳の作用する手前、レンズが映したばかりの新鮮な風景は、死ぬ間際に見る風景とよく似ているのかもしれない。次元を一段踏み外し、光が過ぎても揺らぎ、涙に霞んでも歪み、焦点は結ぼれず何であるのか判然としない、溢れだす世界。止めどなく溢れ出した色とりどりは、混じり交って限りなくニュートラルに還る。

水で描く、描きながら、同時に写しだされたイメージが消され、新たな表層が現われる平面シリーズ「Appearing surface」。これは、絵画でもドローイングでもなく、版画でもなく写真でもない。しかしそれは、絵画でもドローイングでもあり、版画でもあり写真でもある、と言い換えることができるだろう。「曖昧なものを曖昧にではなく、全くの中間に位置するものメ明確なグレーモを提示したいんです」だからこそ、彼女は対の概念を超え、あらゆる意識を内包しようとする。それは時に、観るものの立ち位置を足元からクラクラと危うくさせる。

一つ作品が出来上がっても、決してそれでお仕舞いなどではなく、また違ったステージへと繋がってゆく。泳ぎ続けなくては死んでしまう魚、振り子を振り続けなければ止まってしまう柱時計、足を切るまで踊り続ける赤い靴の少女。媒体を変え動き続けることで、ようやくワタシはワタシであり続けていられるのだ、とでもいうように。

平面、オブジェクト、映像、インスタレーション、パフォーマンスノ様々な形で作品を展開し、刻々と違う表情をみせる多面体性かわむらるみ。未だ熟れきっていない夏の匂いを感じる午後、ぜひ足をお運びください。