時の旅・風の景III

杉浦 誠 展

2010.8.21(土)-9.5(日)



気まぐれに立ちこめる深霧に視界を失い、海岸に吹き荒れる暴風に打ち上げられる船。強い日差しに洗われ、やがて砂の一粒と同じく、すっかり乾いたものとなってゆく。呼ぶのだろうか。八〇〇〇万年以上経ても尚、奥底に抱きし忘られぬ記憶が。緑に覆われた、いにしえ、なつかしき湿りの欠片を。巨岩の影にテントを張り、一夜を過ごす旅人。彼もまた今夜、砂の腕に抱かれて、悠久の時をわたるユメをみるのだろう。

時を重ねるほど、その色合いを鮮やかにするという砂漠。西陽を浴び、金に輝く稜線。風が施すカービングに瞬間瞬間、姿を変える。圧倒的なボリュームを保ちながら、同じ表情を二度とみせない。死と生がくっきりとしたコントラストで寄り添う。無常。それを見下ろしているのは、いったい誰だ?

空を翔る鳥の視点に立ち、未だ知らぬ地へと誘う作品群。今展では新たに、動物たちの登場する作品も並ぶ。腹を氷につけ一休み中のシロクマ、川を泳ぐゾウの家族、風を受けすっくと立つライオン…それらは、動物を作りたかったのだというよりむしろ、風景の一部として、大地の一部として在るのだという。「街並の家と同じなんです」と。

次なる季節の気配混じる、晩夏の頃。一塊の木に彫られた世界へと上空からダイブ、そこに流れる様々な空気を、ぜひお楽しみください。