時の旅・風の景IV

杉浦 誠 展

2012.6.30(土)- 7.16(日)



砂に描かれた風紋、影を落とす岩々、乾ききった空気、まもなく夜。途端に気温は下がり始める。過酷な自然に身を置く者、旅人の姿はみえない。小さなテント、傍らの焚き火の跡、風により徐々に記憶を消されてゆく足跡…一体、何のためにここまで来たのか。鳥は二三度旋回し、もうじき帰るだろう。暗くなる前に、己の寝床へ。

これまでよりもボリュームのある作品をつくってみたい、と生まれた「鳥の視点 -砂漠にて -」。ごっそりと大地ごと持ち上げられたようなスケール感。と同時に近年、過去作に手を入れることも多くなったという。振り返ると、自分の幼さも考え方の違いも見えてくる。高さをほんの数センチ低くするだけで、ぐっと表情を変えるものもある。

そして2011年春以降、「青い鳥」や「四ツ葉のクローバー」といったモチーフを彫りはじめた。何のてらいもなく。しかし青い鳥はどこへ向かうのか、行く先は自らの手で示さない。安易に わかる などとはいえないから、ただわからないながらも自分ができる「木を彫ること」で、祈りの触媒となるようなものを形にせずにはいられなかったのだと。

世界中から切り取られた、地と空と海と山とが大胆に配される今展。濃密になってゆく夏の気配に愉楽を覚えながら、爽やかな木の香りいっぱいに包まれたギャラリー空間へと、ぜひ足をお運びください。
R・E