土岐、暮れの刻、薪窯の火色

伊藤 慶二展

2014.1.18 (土) - 2.16 (月)



 暖となり闇を照らす。調理を可能にし、敵を払い、魔を除ける。文化を進めた火。土が焼かれ、器や信仰に関わるオブジェが生まれた。山のように用意された薪が、リズムよく窯に入れられていく。薪窯の前にいると、無意識のうちに「火」について思いを巡らしている自分に気づく。

 焚き火に薪をくべると、ぼうっと音を立て炎があがった。薪窯ならば春や秋が良いのでは、と訊いてみる。と「火遊びは冬の方がいい。寒い時の方が『やっている』という感じがするから」照り返しに赤く染まった横顔が悪戯気にほころんだ。薪窯の作品は、良しも悪しも両極端だと言う。「その意外性が楽しいんだ。炎が直接あたって焼けるから、表情も自然な微笑みというのかな」。

 『 HIROSHIMA 』シリーズをつくるため30余年前、フランスでみたものを参考にこの薪窯を造った。懸垂アーチで割り出した紡錘型の窯だ。それは強度の面でもさることながら、どこか伊藤慶二の作品と似て、端正で美しい佇まいをみせる。

 窯の癖をとらえ微妙に調節しながら4日間、火と向き合う。体力も精神も削がれ澄まされてゆく。教え子たちがサポートに入り、夜通し窯に薪をくべ続ける。若手の経験の場、無論その意義も大きいのだが、それ以上に「78歳にして、未だ開いていない扉が開く予感」に胸を震わせる作家の姿がそこにはあった。

 久しぶりに手がけた薪窯での新作も並ぶ今展。2014年の幕開けに相応しく、凛とした伊藤慶二の世界が広がります。