記憶の成層圏 V

国島 征二 展

2014.5.17 (土) - 6.1 (日)



 日常で自らと関わったものを記憶と共に封じ込める「ラップドメモリー」は、国島征二が45年間、日記をつけるように継続してきたシリーズだ。石を手にとり、じっと見る。モノと自分との対話の中で、石が石であると確認する。
 一昨年、2ヶ月以上も制作に携われない時間があった。それは非日常だ。しかし徐々にではあるが、それが制作している時間と何ら変わりない時間だと思えるようになった。石が自身と置き換わり、眼差しは己の中の意志をじっとみつめる。対話があり、確認する、「自分とは何か」。決して空白の時間などではなかった。
普段、意識して呼吸をしているわけではない。叶わなくなり初めて、いかにそれが大切であるかを感じさせられる。あまりに自然に制作と向かい合ってきたせいで、ともすれば忘れがちになっていたことに気づかされたのだ。大病を得て「ありがたい」と思った。
 日々、制作を続けることでしかみつからない言葉があり、そうして自分なりの言葉を発してきた。「アートは生きざま」と口にする国島征二。今展では、彫刻の積層シリーズと共にラップドされた本がずらりと並ぶ。これまでも美術誌やDM、果ては電話帳に至るまで、彼の日々に関わった文字という文字は、読みくだされ記憶ごと包まれてきた。 観る者はこれらの一塊に、作家のどんな言葉を聴くだろうか。