空へと還る III

笹谷 晃生 展

2014.11.8 (土) - 11.30 (日)



 記憶の引き出しからイメージを取り出し、造形する。葉、茎、草、樹…命の形は与えられ、その場にとけ込み新たな風景を生む。
 六十代に入り、これまで制作してきた作品を顧みることが多くなった。と同時に、より悔いのない、密なものをつくりあげたいという思いが沸き上がってきたという。自身が作品のなかで心地よく遊ぶ、そのためにも質をあげることが必要なのだ。近年は創作過程に、完成後にしばらく時間を置き、さらに手を入れる工程を設けている。時間という薬が、完成した作品からさらに足りないものを炙りだし、気づかせる。
 「植物は一枚の葉、一節の茎から、根や芽を出すことができる。そんな不思議な世界を表現したい」そう作家は話す。
 切り株から芽吹いたような台座部分が、以前のものと少し違うだけなのに、印象はずいぶん変化する。細部にまで手を加え、修正する余地がないほどまでに研ぎすまし、酌み尽くせない豊かさを姿に写す。また、かたち、大きさ、種類、群生するものなど、植物の豊かさ。それを可視化させる手だてとして、これまでに制作した作品と、さらにこれから作り出す作品を含めた多様な植物彫刻によるインスタレーション「草園」を作りたいと考えているという。
 静かだが優しく、じっくりしみ込んでくるような余韻を残す。壁に卓上に、床に生え、素材の性質を超えて、やわらかに空へと手を伸ばす。ぜひ、笹谷晃生の世界を愛でにいらしてください。