記憶の成層圏VI

国島 征二 展

2016.1.16 (土) - 1.31 (日) 13:00-20:00


 車を降りると、思わず身震いをした。それでも初雪は未だだという12月半ば。本格的な冬が訪れれば、氷点下になることも珍しくないと笑う。下界よりも7〜8℃は低い気温、まちなかの喧噪や車の走る音すら届かない額田の山中にあるのは、澄んだ空気と鳥のさえずり、時折、遠くで鹿の鳴く高い声、そして作家の住まいとアトリエである。
 朝起きてすぐストーブに薪をくべる。そしてアトリエへ足を向け、昨日の自分の仕事を振り返ることから1日がはじまる。あとは、自分が作家であることの証であるように、ただひたすら制作を続ける。夕方になれば、道具をグラスに持ち替えて、終わりを迎える今日に献杯する。
 70歳を越え大病を得てからこちら、生活がよりシンプルになっているそうだ。傍目からみていても、余計なものが削がれ、本当に必要なものだけがここにあるといった風情だ。いや、ここまで作家として生きてきた年月があるからこそ、こだわりははっきりと強くなっている。自分の納得できる生き方をしていきたいという覚悟が、身にふりかかる塵芥の類いを振るい落としているのかもしれない。だからこそいま、すっきりとした心持ちで制作に向かえるのだろう。
 話をきくアトリエは、驚くほど暖かい。薪ストーブの中で、火が赤々と燃えていた。その赤さが、作家の内に宿す表現への思いと重なってみえた。


上部作品:“A.C-7A 09-24” 26x111x53 cm 2009
右上作品:“F” 23.5×35.5×14cm 2015
右下作品:“Wrapped Memory”
     “S.K Art Catalogue 1976-1982 & Rust Nail”
     71.5×83×9cm 2015