水・植物・魚

伊藤 秀男 展

2018.10.20 (土) - 11.4 (日)
13:00 - 20:00 

作家在廊日:10/20(土)、21(日)、11/3(土)、4(日)



"シャボテンおじさん" キャンバス、アクリル 2018 27.5 x 22cm

上 :"鯉と鬼蓮" 紙、アクリル 2018 18 x 14cm
右 : "サバ" ネパール紙、アクリル 2018 53 x 17 x 8cm
    今でも山より海や川の傍、それも庭先まで水が迫るほどの水辺に住みたいと考えるのは、生まれ育った場所のせいだろう。大小の川に両脇を挟まれた一帯は、江戸時代中期、海を埋め立てできた土地だった。
 伊勢湾台風に見舞われ、まちは浸水し元の海に戻った。覗き込むと、沈んだ家屋の間を魚が泳いでいる。そこから半年以上、我が領分だと言わんばかりに海は居座わり、仕方なく人々は舟で往来した。しかし不思議と、恐怖や哀しみといった感情を覚えることはなかったという。アジアの水郷地帯の風景を見ているようで、妙に愉しかったのだ。
 川と名はついていてもそこは海の入江。満潮時は水が逆流し、堤防から手を伸ばせば触れられるほどに水面が膨れ上がったものだ。魚や貝が獲れ、潮が満ちると橋から飛び降り泳ぐ人の姿もあった。時に災害も引き起こすが、生きる上で欠かせない水。満ちてくる水はどこか温かにも思え、水と暮らしがともにあるそのまちの、南国のような大らかさが好ましかった。二十歳の頃、河川の改修工事により、故郷は堤防の下に消えてしまったが。
 植物でもバショウやシュロ、ソテツなどエキゾティックなものに魅かれてしまう。「先祖が南方からやってきたのかも」と、まんざら冗談でもなさ気な口調。水、植物、魚、これらを描く時、身体の中から追い出すことのできない南方を指向する思いが、ことさら色濃くあらわれるのかもしれない。