「ありしよりけに」とは「以前よりもいっそう」という意味を持つ古語だ。これまで石田典子は、個人的なテーマをオープンにする方法で制作を続けてきた。こんな時世だからこそ、より日々に目を凝らしたい。にじり寄ってくるお化けのようなものから身を護るためにも、かけがえのない、当たり前の毎日を大切にして生きていきたいと思ったという。表現できる、自分がやりたいことのある、ありがたさを感じて。その時間は、自身を静かな埠頭につなぎとめてくれる。
数字ではなくそこには個がある、同じように見えてまったく違う一つひとつの個、一人ひとりの日々が。お気に入りのカップで飲むコーヒー。庭仕事を怠ると、すぐに茂る雑草。自家製の味噌や梅干し。ぱらぱら落ちる赤い実。自分が立っている地面の下。季節をおしえる空の高さ。そして、ものづくり。ありしよりけに、日々。






