6年半ぶりとなる杉浦誠の個展である。この間、琉球王家の菩提寺、旧円覚寺に安置されていた仁王像の模造復元や、首里城正殿に納められていた扁額の復元に奔走していた。特に前者は、太平洋戦争末期の沖縄戦で破壊された像の残欠部材13片を基に、聞き取り調査や科学分析を重ね、完成まで6年の歳月が費やされた。
復元の仕事はとにかく自分を出さないこと。当時の技術や考え方を見つめ直しながらノミを振るう時間が続く。そうして改めて自身の制作に立ち戻った時、自分を前面に押し出し表現する仕事に戸惑ったそうだ。充電期間などと、うそぶいてもみたが実のところ、頭の中はすっかり混乱していたのだと。一呼吸ずつ自身を取り戻し整えるには、作品と向き合うほか術はなかった。
また、木に対する姿勢が柔軟に変化していることにも気づかされる。以前は、つくりたい形を木に託すように彫りすすめていた。突き詰めて、彫り込みすぎるきらいも、ままあった。今は木の成りを生かすような仕事が増えた。新たな視座で生み出される作品たち。「き」とは無論、木であるが気や己でもあり生、希、綺や輝でもあるだろう。 き、ありき。