山本 一弥

幻覚と窓

2023.11.4 - 2023.11.19

 布の襞や皺、身体の一部が何かに見える、その錯覚に導かれ作品をつくりはじめる。シンメトリーに拘らなくなったのも、四角い作品が増えたのも、完結しなくてもよい、風景の一部を切り取るがごとく、つくるようになったからかもしれないと山本は語る。
 以前より色合いは透明感が際立つ。向こうが透けて見えるほどのそれは、重さを感じさせず、ぼうっと在る。在る? これまでも充分に曖昧で不確かだったのに、そこに在るはずなのに、不在そのものの象徴のように現実感を欠き、そこに「在るようにみえる」。触れると消えてしまうのではないか。より掴みどころがなく、より軽やかで儚く存在自体を不明瞭にさせて。
 知らないのに知っている、いや知っているのに上手く記憶から掬い出せないのか。しかし、それは不快ではない。感覚に意識を委ねていられるのは、そう、どこもかしこも、なにもかも曖昧なままでしかいられないとわかっているから。名前を持たぬナニモノカを瞳に写す。己の存在の不確かささえ覚えながら。

WORKS

PROFILE

略歴
2000 武蔵野美術大学 造形学部 彫刻学科 卒業
2002 武蔵野美術大学大学院 造形研究科 美術専攻彫刻コース 修了
受賞歴
2004 第10回ADSP入選
個展
2017 エントランス/ Gallery OUT of PLACE TOKYO/ 東京
2016 Advent/ CCCSCD by cifaka/ 岡山
2014 相似の庭 III/ L gallery/名古屋
2011 相似の庭II/L gallery/名古屋
Desire/キドプレス/東京
2010 a piece of space APS/東京
Gallery Camellia/東京
グループ展
2018 ダブルリフレクション 世界を見つめなおす瞬間/富山市ガラス美術館/富山
2017 北参道オルタナティブ・ファイナル/旧バニーコーポレーション本社社屋/東京
2015 本てんBOOK Chapter2/MA2 Gallery/東京
依頼制作
スカパー東京メディアセンター/東京
イイノホール/東京
横浜野村ビル/横浜
ホテルオーレイン/静岡
JPタワー名古屋/名古屋

PAST EXHIBITION