晩秋の淡い光が射し込むアトリエ、足を運ぶといつもいつも新しいものづくりに取り組んでいる作家の姿がある。そうして、アトリエそのものが、まるで一つの宝箱のようだ。激しさと静けさがぶつかり合い、発した熱が徐々に引き、薄くぬくもりの残る空気。
いたずらを仕掛けるような微笑みとともに差しだされた新作を見て、驚き、思わずこちらも頬を緩めた。実験的だとかを超えて自由に遊び心がスパークしている、年齢など関係ないのだなと心底、思わされた瞬間だった。
「神判に用いられた伝説上の生き物、廌」と心、「ゆっくり行くの意を持つ足の象形、夂」が合わさり 「人のよろこびを祝いに行く」を意味する「慶」という字が成り立ったとも言われている。正月をまたぎ開催する今展は何ともめでたく、祝いに満ちた空間になりそうだ。
師走の慌ただしさからお正月、ゆるやかに流れる時の合間、伊藤慶二の手から生まれた賜物たちが、あなたとの出逢いを待っている。