湯浅 未浦

時・刻む・想

2019.11.9 - 2019.11.24

 時を刻んで生きている。刻むのは時だけでない。感情も変化し、想いも移ろう。そうして表面的には明確にわからなくても、昨日より今日、一秒前より今の方が完全に老いてもいる。
 例えば、人体を象った『刻々と…』の後ろに引いた手や足元は、消えて融けているようだ。右手はなにかを受け、顔は天を仰ぎ、その表情は降り注ぐ希望やよろこびに満ちているというのに。「生は負の要素を孕んで初めて成立し、意味を成すのでは」と湯浅未浦。「正と負の両方が備わっていて、初めて自分のイメージする生性が表現できる」。前を向いて生きていることは、腐敗のベクトルを辿っていることと等しいのだ。そのほかの作品とて、人の形を借りてはいないが、すべて同じ心持ちで向かっている。
 以前は、時間の許す限りのめり込んで、作品から離れられなかったそうだ。「過呼吸のような制作スタイルでした」と本人。逆に今回、彫り返しの効かない一木造に向き合ったが、作品に触れている時間はこれまでより少なくなった。つくりやすかった、素直に木のすべて受け容れて、いちいち腑に落ちながら彫り進められたそうだ。「向こう(木)も、少しは自分を受け容れてくれた気がします」。
 形をつくるだけが「つくる」ではない。形でない部分をつくりたい。現実的に彫るという行為を行いながらも、作家は形にならない何かを求めて時を刻み、思いを刻んでいる。

WORKS

PROFILE

略歴
2002 東京藝術大学 美術学部 彫刻科 卒業
2004 東京藝術大学 大学院 彫刻専攻 修了
個展
2023 呼吸のカタチ/L gallery/名古屋
2021 ここからのはじまり/L gallery/名古屋
2019 時・刻む・想/L gallery/名古屋
2018 個展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2017 流れる時間/L gallery/名古屋
2015 ~木彫展~/画廊じんがら/知立
2014 個展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2012 個展/画廊じんがら/知立
2009 個展/画廊じんがら/知立
2006 個展/画廊じんがら/知立
2004 個展/画廊じんがら/知立
グループ展
2020 RECEPTOR/masayoshi suzuki gallery/岡崎
2019 GIFT展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2018 GIFT展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2017 GIFT展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2016 サマーズ展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2016 スプリング展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2015 GIFT展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2014 Global Artist Movement展・文部科学大臣賞/豊田市美術館/豊田
GIFT展/THE BLUE BOX GALLERY/岡崎
2013 21世紀の立体造形 −シリーズ最終章− /松坂屋 名古屋店/名古屋
2009 コンテンポラリー展/刈谷市美術館/刈谷市(〜2016)
2008 21世紀の立体造形 vol.2/松坂屋 名古屋店/名古屋
2007 宮崎国際現代彫刻 空港展/宮崎空港/宮崎(2008、2009)
Continue再会展/KEY Gallery/東京
とよた美術展’07 入選/豊田市美術館/豊田
2006 京展 入選/京都市美術館/京都 
2005 DISCOVERY/KEY Gallery/東京(2005)

PAST EXHIBITION